2.実務で多い無効原因-遺言の形式違反-

遺言の形式違反とは、遺言を作成しようとしたものの、結果的に遺言の要件をみたしていないため遺言としての効力が発生しない場合をいいます。

遺言の要件をみたさない場合ですので、理屈上は、自筆証書遺言と公正証書遺言(その他に秘密証書遺言、危急者遺言もありますが実務ではほとんどお目にかかりませんので割愛します)の形式違反がありえますが、実際には自筆証書遺言で問題になる無効原因と言えます。

公正証書遺言の場合は、元裁判官・元検察官である公証人が公正証書遺言の要件をみたすか否かを確認した上で作成するものであるため、形式要件をみたさない場合がほとんどありません(なお、認知症等により公正証書の要件である口授が欠けるとされる場合を除きます)。公証人に費用を支払って公正証書遺言を作成する目的は、遺言の効力に問題が生じないようにすることにありますので、公正証書遺言では、事実上形式要件が問題にならないということは、当たり前のこととも言えます。

では、自筆証書遺言が形式違反として無効にされる場合とはどのようなものがあるのかということが気になります。実際に遺言の形式違反として無効になったものとして以下のような事例があります。

遺言の形式違反で無効になった事例

  1. 遺言者の手に配偶者が添え手をして遺言を書かせた事例
  2. 遺言の本文がタイプライターで作成され署名(自書)・押印がなされた事例
  3. 遺言の本文を自書し、遺産の内容を記載した目録をパソコンで作成して添付した事例
  4. 日付が「吉日」と記載された遺言

1.は、実質的には添え手をした人が記載したと評価できるため「自書」とは言えないとされました。2.及び3.も遺言者が自ら記載したものではないことから、「自書」の要件を欠くとされました。2.及び3.については、遺言者本人がワープロやパソコンで作成したのであれば本人の意思が明確であることから、自書の要件をみたすのではとの考え方もありえますが、自書の要件が要求される趣旨は、当該自筆証書遺言を遺言の名義人とされた者が作成したか否かを筆跡から判断することを可能にする点にあることからすると、無効にせざるを得ないものと思われます。4.は、「吉日」との記載では、具体的な遺言作成日が特定しない結果、他の遺言との前後関係や作成日の意思能力の有無が判断できないため無効とされました。

他方で、以下のような事例は、形式違反の主張がなされたものの、自筆証書遺言として有効とされました。

形式違反か否かが問題になったものの有効とされた事例

  1. カーボン用紙の複写で作成された事例
  2. 日付が「還暦の日」と記載された事例

1.は、複写でも作成者の筆跡が記載されており、遺言の名義人の筆跡か否かを判断できること、2.は還暦の日であれば、年月日を特定することができることから、有効とされました。もっとも、これらの事例は、相続人から形式違反により無効だとの主張がなされ、最終的に遺言は可能な限り有効になるように解釈するという解釈基準のもと、裁判所が判断を下した結果、有効になったものです。紛争を回避するためには、カーボン用紙の使用や「還暦の日」といった疑義を生じる記載は避けるべきです。

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